順天堂大学 堀江重郎教授
地域にある食材の価値を、
医の観点で考えていくことが私の役割
健康は、“環境との相互作用”が関係する。
だからバランス良くすることが大切
いきなりですが、「医」とはなんでしょうか。簡単に言えば、病気や傷などを治療することです。では、なぜ、私たちは病気になるのでしょうか。これには大きく2つの「環境との相互作用」があると私は思っています。
1つは、“自分の周辺環境”との相互作用。寒い場所に裸でいれば風邪をひきます。また、太陽の日差しが強いところにずっといれば日焼けをしますし、その影響で熱を出すかもしれません。こういった“自分の周辺環境”との相互作用によって病気になったりするわけです。
もう一つの「環境との相互作用」は、“食べる、という環境”との相互作用。私たちの体の中には細菌(バクテリアなど)が遺伝子よりもはるかに多く存在します(一説では100兆個を超えるとも言われます)。私たちが食事をすると体内に栄養として吸収されますが、同時に体内で共生している細菌にも栄養を与えます。ですので、偏った食事をすると、偏った栄養に反応する細菌が多く体内にはびこってしまうようになります。そうすると、例えば免疫力の低下につながったり、疲れやすくなったり、コンディションを崩したり・・・、いわゆる体調不良になりやすくなります。そうならないために、食のバランスは重要です。バランスの取れた食事をすれば、体内の細菌もバランスが良くなります。ただ、一口にバランスといっても時代や年齢、地域などによって必要な要素や解釈が変わってきますので、なかなか簡単ではないのも事実です。
地域特産物を、他の地域の人にも同じように
価値のあるものにしたい
農産物や海産物などの地域の特産物は、その土地の土壌と気候、そして、その地域に住む人たちの腸内細菌などのバランスが合っているからだと思います。ですので、サプリメントのように食材に含まれるビタミンやアミノ酸といった個別の機能因子がどの程度含まれるかということだけではなく、調理法も重要と考えております。日本医食同源研究所においては、私は地域にある優れた食材、そしてそれを調理した食品を見出し、医学的な価値を評価して、他の地域あるいは海外においても健康を増進する食品を開発するお手伝いができれば幸甚です。